住宅ローンの金利推移は今後どうなるのか?
住宅ローンの金利は、頻繁に変更されています。
今は低金利だとしても、今後どうなるかは分かりません。
しかし、過去の様子から今後どうなるかを予想することはできるでしょう。
金利は、今後どのように変動していくと予想できるでしょうか?
これからの金利の推移について、解説していきます。
現状の住宅ローン金利
住宅ローンの金利は、日本銀行による政策金利の影響を受けて変動していきます。
現在はマイナス金利政策の影響により、金利は過去最低の水準となっています。
変動金利の場合、2008年頃には1.875%あったのですが、2021年末には0.475%にまで下がりました。
なお、同じ頃(2021年末)のりそな銀行の変動金利は0.370%、PayPay銀行は0.380%まで下がっています。
これほど低水準になったことは、これまでありませんでした。
変動金利型の住宅ローンの資金は、主に短期金利市場から調達しています。
そのため、金利は短期金利に連動することが多いのです。
その指標となるのは、日銀の政策金利であり無担保コール翌日物レートです。
これは金融緩和政策によって、現在は-0.01%まで下がっています。
固定金利型の住宅ローンであれば、代表的なものにフラット35という商品があります。
これは返済期間や頭金の割合で金利が変わってくるのですが、ここでは例として返済期間が21年以上であり、頭金が10%以上の場合の最低金利を確認してみましょう。
固定金利は、2008年頃からほぼ一貫して下落しつつあります。
2007年頃の金利は3%ほどでしたが、2019年9月には1.11%と過去最低の金利になっていて、そこからは上がっていますが2021年末は団体信用保険込みで1.33%となっています。
現在の住宅ローン金利は、過去最低水準になっています。
ちなみに、フラット35の貸出資金は市場から調達しているので、金利は日本国債10年の利回りとおおよそ連動しています。
日本銀行による金融緩和政策は日本国債利回りにも影響していて、こちらもずっと下落しつつあるのです。
そして、それに連動するようにフラット35の金利も下落しています。
なお、地域によってはフラット35と地方公共団体が連携していて、借入金利が一定期間引き下げられることがあります。
これは子育て支援やUIJターンによる移住・定着の促進などの施策を行っていることが条件で、横浜市や川崎市などはこれに当てはまっています。
金利を決定するのは?
では、金利はどうやって決まるのでしょうか?
その要因となるのは主に2つで、日本銀行の政策を受ける市場の金利と銀行間のローン獲得競争です。
銀行は、住宅ローンとして貸し出す資金を金融市場などから調達します。
そのため、住宅ローンの金利にはどうしても市場金利が影響してしまいます。
変動金利の場合は、短期金利市場の影響を受けます。
固定金利は、10年国債金利の長期金利の影響を受けることになります。
しかし、それよりも影響が大きいのが、銀行間での住宅ローン獲得競争による金利の引き下げです。
特に、貸出先が少ない銀行は住宅ローンの獲得に意欲的で、そのような銀行は多いのです。
ライバル銀行に競り勝って自行から借りてもらうためにはどうしたらいいか、最もわかりやすいのが金利の引き下げでしょう。
顧客獲得のために、お互いに金利を引き下げているので競争は過熱していくのです。
住宅ローンにおける金利引き下げのことは、金利優遇とも呼ばれています。
変動金利と固定金利を比較すると、特に銀行間の競争による影響を大きく受けるのは変動金利です。
例えば、三井住友銀行では日銀の政策金利に連動している店頭金利が2008年9月の時点では2.875%、2012年9月は2.475%、2021年11月には同じく2.475%としていました。
この店頭金利は、各銀行でほぼ変わりがありません。
店頭金利は日本銀行による金融緩和策の影響で徐々に下がってきたのですが、大手銀行では過去10年以上、2.475%のままで下げ止まっています。
日本銀行では政策金利を引き下げることで景気回復を目指していたのですが、それだけでは十分な効果がなかったので資産を買い入れる量的緩和やマイナス金利なども行いました。
2020年に新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、政府は緊急財政出動を行っています。
日本銀行もそれを側面支援しているので、金利も現状の低金利を維持するという方針になっています。
岸田文雄総理も金融政策は現行のものを踏襲する立場にあると思われるので、今後数年間は金利が上昇する可能性が低いでしょう。
店頭金利の決め方としては、信用度が高い大企業に融資する際の最優遇金利である短期プライムレート+1%という設定にしている銀行がほとんどです。
しかし、実際に住宅ローンの金利となるのは店頭金利ではなく、そこから金利優遇幅を差し引いた表面金利となります。
この金利優遇幅が、銀行間での違いとなるのです。
三井住友銀行の場合は、2008年の金利優遇幅は1.000%で表面金利は1.875%、2012年は1.600%の金利優遇幅となり表面金利は0.875%と1%を切りました。
そして、2021年には優遇金利幅が2.000%となり、表面金利は0.475%に下がっているのです。
なお、これはネット契約専用の金利となっています。
店頭金利には変化がないのですが、金利優遇幅はどの銀行でも拡大しています。
金融自由化となった今、金融機関では住宅ローンを収益の柱にしようと考えているところが多いので、顧客を獲得するために金利引き下げ競争が激しくなっているのです。
一方、長期固定金利でも優遇幅は大きく影響しています。
全期間固定金利のフラット35は公的融資の側面が強いローンですが、その金利はほぼ日本国債10年に連動しています。
なお、フラット35には2種類あることも忘れないようにしましょう。
ほとんどの銀行ではフラット35(買取型)を扱っていて、その最低金利はどこもほぼ横並びです。
しかし、ARUHIや住信SBIネット銀行などで扱っているのはフラット35(保証型)というもので、買取型よりも金利は低く設定されています。
また、頭金の割合が多いほど金利も低くなっています。
長期固定金利の金利優遇幅を見ると、三井住友銀行では変動型と同じ割合で優遇しています。
店頭金利が変動型より高いので、表面金利は変動型よりも高くなっていますが、それでも2.950〜1.400%となっています。
また、ネット銀行ではその下げ幅がさらに大きく、0.6%という非常に低い水準となっています。
金利優遇幅は、こちらでもかなりの影響があるのです。
今後の金利予想
今後、住宅ローン金利はどのようになっていくのでしょうか?
大手シンクタンクの長期予想では、数年は上がらないものの5〜6年後からは徐々に上昇していくとされています。
金利は現状が最低水準であり、これ以上下げるのは難しいでしょう。
特に変動金利は0.5%を割り込んでいる状態で、銀行が支払う住宅ローンのコストには足りず赤字になっていると考えられます。
そのため、住宅ローンについては現状維持となり、銀行は別のところに収益の柱を見出すかもしれません。
では、固定金利のほうはどうなるのかといえば、こちらもやはり当面は現状維持となるでしょう。
そのため、すぐに住宅ローンの金利が上がるということはまずないと言えます。
しかし、日本の景気が回復したと判断された場合は、金利も上がっていくでしょう。
なるべく安い金利の期間を長くしたいのであれば、なるべく早く住宅ローンを利用したほうがいいでしょう。
まとめ
住宅ローンは借りる金額が大きいので、金利が少しでも変動すると返済金額は大きく変化してしまいます。
金利が下がって返済金額が少なくなるのであれば大歓迎でしょうが、現状よりも金利を下げる余地はほぼないため、今後は現状維持か金利上昇のどちらかとなる可能性が高いでしょう。
金利の動きをよく見て、住宅ローンを利用するタイミングを判断してください。