物件価格の上昇と住宅ローン金利の関係
現在、住宅ローンは非常に金利が低くなっているため、利用しやすくなっています。
しかし、その一方で物件価格の上昇があり、住宅ローンでの借入額が大きくなりがちです。
物件価格の上昇と、住宅ローン金利には何らかの関係があるのでしょうか?
その関係性について解説します。
住宅ローン金利と物件価格の上昇の関係
これまで、世界各国のほとんどで物価が上がらず、金利も低い状態のままでした。
しかし、その状態に転機が訪れます。
新型コロナウイルスの感染拡大や、ロシア・ウクライナ戦争などがきっかけとなり、物価や金利が上昇してきたのです。
本来、こういった出来事は憂慮するべきものです。
しかし、コロナ給付金などを政府が行った結果、経済が刺激されて物価の上昇につながり、世界的に金利も上がってきたのです。
日本でも、物価上昇率は2%を超えています。
また、金利については金融緩和で低金利が維持されていますが、世界的な動きを見ると日本でも上がることは充分に考えられます。
金利が上昇した場合、どのような影響があるのでしょうか?
実は、金利は物件価格の上昇に大きく影響するのです。
なぜかというと、物件を購入する際は融資を受けるからです。
不動産の物件は、非常に高額です。
最低でも数百万円で、億を超えることも珍しくはありません。
そういった金額を、一括で支払うことができる人は少ないでしょう。
また、不動産というのは投資商品でもあります。
そのため、投資対象としての魅力にも関わってくるのです。
どういうことか、具体的に解説していきます。
まず、住宅ローンなどの融資を受けて物件を購入する際は、借入金額に利子を加えて返済することになります。
金額が大きいので、金利がわずかに違うだけでも返済金額は大きく変わります。
例えば、5000万円を30年元利均等返済、ボーナス返済なしとして借入れた場合、毎月の返済額、年間返済額、総返済額は金利が異なると、どう変わってくるのでしょうか?
その違いを以下の表で見てみましょう。
金利 | 毎月返済額(円) | 年間返済額(円) | 総返済額(円) | |||
---|---|---|---|---|---|---|
1% | 160,819 | 差額 | 1,929,828 | 差額 | 57,894,840 | 差額 |
2% | 184,809 | 23,990 | 2,217,708 | 287,880 | 66,532,140 | 8,637,300 |
3% | 210,802 | 49,983 | 2,529,624 | 599,796 | 75,888,720 | 17,993,880 |
4% | 238,707 | 77,888 | 2,864,484 | 934,656 | 85,934,520 | 28,039,680 |
5% | 268,410 | 107,591 | 3,220,920 | 1,291,092 | 96,627,600 | 38,732,760 |
金利がわずか1%違うだけでも、返済する金額には大きな違いが生じます。
金利が1%から5%になると、返済する金額は1.6倍以上になるのです。
これでは、わずか4%の違いとは言えないでしょう。
不動産投資の場合、5000万円の物件を表面利回り6%で購入した場合、年間300万円の家賃を得ることができます。
金利1%であれば返済額に対して年間100万円以上の差額を得ることができるのですが、4%だとほとんど差額がありません。
まして、空室があるとその分利回りは下がってしまい、管理費や修繕費、税金などもかかるため、金利4%では赤字になる可能性が高いでしょう。
3%でも、差額が少ないのでリスクは充分にあります。
不動産投資の場合、横浜市や川崎市で人気がある新築ワンルームマンションなどは、たとえ赤字になっても節税になるからと言われて購入する人はいます。
しかし、本来不動産投資というのは利益を上げるために行うものです。
そのため、金利が上がった場合は求められる表面利回りも上昇していきます。
例えば、金利が1%の時は表面利回りが6%の物件でもいいという人も、金利が3%になれば8%以上、4%なら10%以上と求められる利回りも上がっていくのです。
これは、物件価格が下落するということを意味します。
物件の家賃を増やさずに表面利回りを上昇させるには、物件価格を下げるしかないのです。
アパートローンであれば、たとえ金利が上昇したとしても返済額が一定以上に増えないようにする、125%ルールというものが設けられています。
しかし、事業用ローンであればそのようなルールがないため、注意しましょう。
住宅ローンの場合も、金利が上がると返済額は増えてしまうため、物件価格の上昇はなくても不動産を購入するために必要な資金は増えてしまいます。
変動金利型の住宅ローンを利用した場合、最初は返済額が少なかったとしても後から徐々に増えてしまう可能性があるので、注意しましょう。
また、物件価格の上昇には購入を検討する人の購買力にも関係があります。
収入が増えて購買力が高い人が増えることが、物件価格の上昇につながるのです。
収入が増えない限りは、購買力を持たない人が増えるでしょう。
過去の平均所得と中古マンション平均成約価格を見ると、その2つには相関関係が見受けられます。
平均所得が高くなるほど、物件価格の上昇もしていることが見受けられるのです。
物件は、いくら高く売りたいと思っていても、それを買う人がいなければ意味がありません。
そのため、買う人が多いことが物件価格の上昇につながり、買う人が少ないことは価格低下につながるのです。
物件価格の上昇と住宅ローン金利には、その動きにも関連性が見えます。
住宅ローン金利の低下は物件価格の上昇につながるのですが、金利が低水準で停滞した場合は物件価格の上昇も停滞するのです。
物件価格の上昇には金利低下が必要?
金利が高くなると、物件価格は下落していきます。
では、物件価格の上昇には金利が低下しなくてはいけないのでしょうか?
実は、そうとは限らないのです。
確かに、金利の低下は物件価格の上昇へと直結します。
総返済額が同じなら、金利が低い方が物件に支払う金額を大きくできるのです。
しかし、現在の日本の金利は、これ以上は下げる余地がほとんどありません。
現在の低金利は、いつまでも続くとは考えられていません。
固定金利で人気のあるフラット35の金利を見ると、2004年には3.5%だったのが現在は1.5%ほどになっています。
そのため、金利の低下が要因となる物件価格の上昇というのは、あまり期待できません。
しかし、物件価格の上昇には他の要因もあるのです。
主に、経済的要因と社会的要因があるのですが、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか?
経済的要因というのは、一部に建築資材や人材などが集中して不足することで、物件価格の上昇につながる等のことを言います。
例えば、東日本大震災の際は東北に集中して、それ以外のところでは不足したため物件価格の上昇へとつながりました。
低金利のうちに住宅を購入しようと考えた人が多いことも、物件価格の上昇の要因となっています。
価格を上げても、購入希望者が多ければ売れるからです。
また、東京オリンピックのようなイベントは、経済的要因と社会的要因の両方に関係します。
イベントによって世界中から注目されたことで、海外の投資家が投資をして物件価格の上昇が起こったのです。
そして、大規模なイベントの会場となる都市やその周辺地域は、インフラの整備や都市機能の強化などが行われるため、そのエリアの物件は価値が増し物件価格の上昇になるのです。
同じく、再開発も物件価値の上昇の要因となります。
横浜市でも、横浜駅からみなとみらい周辺にかけて再開発が行われていて、川崎市も駅前周辺で再開発が行われていて、2021年にも大規模複合再開発プロジェクトとしてカワサキデルタが建設され、今も再開発は続いています。
まとめ
物件価格の上昇には、住宅ローン金利が大きく関係します。
住宅ローン金利が低下すると物件価格の上昇につながるのですが、今後日本の金利は上がっていく可能性が高いでしょう。
そのため、物件価格の上昇は別の要因で起こる可能性医が高いと思われます。
金利と物件価格の上昇に注目して、今後どうなっていくのか考えてみましょう。